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床屋のサロン
10年以上にわたる取引、駆け引き、そして技術の研鑽
鏡が割れるたびに不幸が倍増した時代を覚えている。当時、古いベルトのバックルを新しい鋏と交換し、星を見ながら屋根の修理に明け暮れた。星座を辿り、月の銀色の光を脳裏に焼き付けた。今も目を閉じれば覚醒時も夢の中もその光が浮かぶ。 客を太陽より輝かせるのが使命だったが、星々は新たな運命を定めた。 戦火が迫る今、光は私をケルビン要塞へと導く。壁も剃刀も敵を止められぬ。天の意志がサロンからの離脱を命じる。この犠牲に耐えられるか? 星々の網に身を投げ、糸を組み直し我が意志彼らに刻みたい。
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新規の顧客が落ち着かない
彼らは強烈なコロンで恐怖を隠すが、汗の悪臭は消せない。理由を明かす者はいなかった。ただ一人、優しい顔に白髪を垂らした老婦人が恐怖の正体を口にした。 夜感じる「地の震え」が眠りを妨げる。当局パイクミードの地に報告しても無駄だった。私も首都の出身だが、こんな話は聞いたことがない。公に認めれば恐怖が固定化するため、沈黙を選ぶ者が多い。 深い眠りでは不気味な音も届かぬが、安らげない。夢の光がここではより強く燃える。 サロンを閉め、数日を顔料の調合に費やした。作った赤い染料は太陽で血のように輝く。凶兆でなければよいが。星々は私を好みの虐殺に誘ったのか?
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